住宅ローンの頭金を入れすぎても損はないが資金不足などに注意|頭金の適正額を決める方法も解説

※本コラムは、広く一般的な情報提供を目的としており、弊社のサービスに限らず、多くの方にとって役立つ内容を意識して執筆しています。
詳細なご相談や専門的なアドバイスが必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お手元に一定額の資金がある状態で住宅ローンを利用する場合には、手元資金のうちいくらを頭金にするか悩みますよね。
「頭金を入れすぎると、住宅ローン減税で損をするって本当?」など、疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、茨城県全域で資金計画の段階からご家族の家づくりをサポートしている『ノーブルホーム粋(SUI)』が、頭金の額を決めるために必要な情報を、わかりやすく解説します。
家を建てた後の「スムーズな住宅ローン返済」「急な出費に慌てない安定した生活」を実現するために、ぜひ最後までごらんください。
目次
住宅ローンの頭金を入れすぎても損はしない理由

「頭金を入れすぎると、住宅ローン減税の恩恵をフル活用できなくなり損をする」という情報が、インターネット上に多数ありますよね。
実は、住宅ローンの頭金を多く入れて住宅ローン減税で損をすることは、ありません。
理由は、住宅ローン減税は住宅ローンの返済負担を13年間にわたって軽減する制度で、【減税額は「住宅ローンの年末残高×0.7%」】【減税額には上限がある】という条件があるためです。
- 住宅ローン金利が0.7%以下の場合は、「13年間利息0円」で住宅ローンを利用できる可能性がある。ただし減税額には上限があるため、住宅ローンの年末残高が高額になるよう頭金を少なくしても恩恵は一定額までで、損が発生することはない。
- 住宅ローン金利が0.7%超の場合は、金利が高いほど「住宅ローンの返済負担>減税額」となることから、頭金を多く入れるほうが住宅ローンの返済負担を軽減できる。
【参考:住宅ローン減税の上限額】
「1年間に支払った所得税額>住宅ローン減税額」の場合、住民税も減税されます。
税目 | 住宅ローン減税の上限額 |
所得税 | 以下のうち少ない額 ・1年間に支払った所得税額 ・「年末の住宅ローン借入残高×0.7%」で計算し、住宅性能と世帯構成に応じて上限28〜35万円 |
住民税 | 97,500円 |
〈参考〉
・所得税:国土交通省ウェブサイト『住宅ローン減税の子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せ措置等を令和7年も引き続き実施します!』>(別紙)令和7年度住宅税制改正概要
・住民税:総務省ホームページ『新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。』
「住宅ローンの返済負担」といっても元本は住居費そのものなので、実質の負担は利息の支払いですよね。
住宅ローン減税を利用できる期間は13年間なので、「13年間の減税総額」が「13年間の利息総額」よりも多いほど恩恵も大きくなります。
のちほど、「13年間の減税総額」よりも「13年間の利息総額」が少なくなる住宅ローン借入額のシミュレーションを、「「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となるよう頭金で借入額を調整」で紹介します。
参考にしていただけると幸いです。
「頭金を多く入れるor現金一括で家を買う」どちらを選ぶか迷っている場合には、こちらの記事でメリット・デメリットなどを確認できます。
〈関連ページ〉50代で家を買うなら一括払い・住宅ローンどっちが得か|住宅ローン減税、メリット・デメリットなど解説
住宅ローンの頭金を入れすぎても損はないが後悔する3つのケースに注意

住宅ローンの頭金を入れて損が発生することはありませんが、手元資金を頭金として支出した後に、後悔するケースはあります。
- 必ず現金支出が必要な諸費用を支払う資金が不足
- 急な出費を支払えず別のローンを借入
- 【番外編】これから頭金を貯める場合も後悔をする可能性がある
頭金は大きな額ですので、支出後の後悔を避けるために、それぞれの具体的な内容を確認してください
必ず現金支出が必要な諸費用を支払う資金が不足
家を建てる際には必ず現金支出が必要な諸費用が発生します。
そのため、諸費用の支出を考慮せずに頭金を入れすぎると、諸費用を支払えなくなるケースがあります。
(フルローンで住宅ローンを利用する場合でも、必ず現金支出が発生します。)
【諸費用の例】
- 土地購入時の手付金、不動産業者に支払う仲介手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 家具・家電購入費用
- 引越し費用
- 火災保険料・地震保険料 など
諸費用の目安は総予算額の8〜15%ほどが一般的で、総予算によっては数百万円となることもあります。
頭金の額は、諸費用や次に紹介するような費用を手元に残すことを前提として、検討してください。
マンションから戸建てに住み替える場合には、追加の諸費用が必要になります。こちらの記事で、費用・住み替えの流れなどを確認できます。
〈関連ページ〉マンションから戸建てに住み替えて良かった・後悔した理由|仮住まいなしの流れ、家づくりの注意点など解説
急な出費を支払えず別のローンを借入

頭金を入れすぎて手元資金が少ない状態で急な出費が発生し、支払いが難しくなるケースもあります。
そんなときに頼りになるのが「金融機関のフリーローン」などですが、どのローン商品も、金利が非常に高い点がネックです。
【急な出費の例】
- 交通事故・病気などで高額の医療費が発生した
- 想定外の教育費が必要になった(「公立学校を想定していたが、私立や留学を選択することになる」など)
- 転職で収入が少なくなり、貯金を切り崩すことになった
- 災害によって家が破損した など
住宅ローンは最も金利が低いローン商品なので、「急な出費に慌てない額を手元に残す」ことを前提として、頭金の額を検討してください。
【番外編】これから頭金を貯める場合も後悔をする可能性がある
「これから頭金を貯めよう」とお考えの方の場合には、「頭金を貯める期間に発生する家賃」「頭金を貯めることで節約できる利息額」を比較して、住宅ローンの利用方法を検討しましょう。
「頭金を入れることにこだわりすぎた」と後悔するケースがあります。
(例)家賃8万円の賃貸物件で暮らしている場合、以下のように支出額を比較すると、最終的にどちらが損となるかを確認できます。
- 3,500万円の家を、今すぐ頭金なしのフルローンで建てる場合の利息総額
- 3,500万円の家を、5年後に頭金300万円・住宅ローン3,200万円で建てる場合の利息総額
※簡易的に、金利0.7%(全期間)で試算をしています。
住居費 | 今、3,500万円を借入 (借入期間:35年) |
5年後に、3,200万円を借入 (借入期間:30年) |
---|---|---|
元本総額 | 35,000,000円 | 32,000,000円 |
利息総額 | 4,472,372円 | 3,486,685円 |
家賃 | 0円 | 4,800,000円 |
35年間の住居費総額 | 39,472,372円 | 40,286,685円 |
上記のシミュレーションでは、5年後に頭金300万円を入れて住宅ローンを借入すると、35年間の住居費が【40,286,685円-39,472,372円=814,313円】高くなります。
住宅ローン減税の観点からは頭金の入れすぎで損が発生することはありませんが、貯蓄期間があることによって住居費総額が高くなるのであれば、明確な「損」となりますよね。
住宅ローンの利用方法は、綿密なシミュレーションをしながら検討することをおすすめします。
茨城県で資金計画の段階から家づくりのサポートをご希望の方は、『ノーブルホーム粋(SUI)』へお問い合わせください。
頭金なしの住宅ローン「フルローン」も可能|フルローンのメリット・デメリット

頭金を入れる場合の住宅ローンについて解説してきましたが、ここで「頭金なしのフルローンもいいかもしれない」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「頭金を入れるかどうか」の判断はご家族の価値観によって分かれるため、次に頭金なしのフルローンで住宅ローンを利用するメリット・デメリットも確認しましょう。
フルローンのメリット
頭金なしのフルローンで住宅ローンを利用する主なメリットは、以下のとおりです。
- 手持ち資金を「残す・別の用途に使う・別の運用で活用する」といった選択が可能
- 手持ち資金が十分ではないと感じている場合でも、住宅ローンを利用できる可能性がある
- 不動産の市場価格上昇リスクを回避できる可能性がある など
フルローンのデメリット
頭金なしのフルローンで住宅ローンを利用する主なデメリットは、以下のとおりです。
- 収入や信用情報の状況によって、希望の額を借入できないケースがある
- 借入総額が増えると利息負担額も増える
- 手元に資金がない状態でフルローンを利用する場合、金利上昇時に繰り上げ返済などの対応ができず困るケースがある など
頭金あり・なしどちらで住宅ローンを利用する場合にも、メリット・デメリットがあります。
次に頭金の適正額を決める方法も紹介するので、「手元資金から適正額を支出できるか」「手元資金を頭金にする必要はあるのか」などを検討する参考にしていただけると幸いです。
頭金の適正額を決める4つの方法を紹介

住宅ローンの頭金の適正額は、「手元資金の状況」「収入の状況」「家づくりのプラン」などに応じて検討できます。
- 「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となるよう頭金で借入額を調整
- 「フルローンの返済額」「無理のない返済額」の差額を頭金にする
- 「手元の資金額」「1〜2年間の手取り収入額」の差額を頭金にする
- 「住宅ローンの借入可能額」「住宅の見積もり額」の差額を頭金にする
ご家族の状況に合う方法で、頭金の額を検討しましょう。
※現金支出が必要な諸費用を別に確保していることを前提に、頭金の適正額を検討する方法を紹介します。
「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となるよう頭金で借入額を調整
前述したとおり、住宅ローン減税には上限額があります。
上限額の範囲内で「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となるよう、頭金で借入額を調整しましょう。
「減税総額」「利息総額」ともに住宅ローン利用者によって違うため、今回は2パターンのシミュレーションを紹介します。
※以下のシミュレーション内容は住宅ローン利用者によって変わるため、参考としてごらんください。

【シミュレーションの条件】
- 借入期間:35年
- 金利:全期間0.7%
- 借入時期:1月に住宅ローン契約、2月〜返済開始、ボーナス返済なし
- 住宅ローン減税の上限額:35万円(最も省エネ性能が高い住宅を建てる・子育て世帯)
【パターン1:13年間、所得税額が住宅ローン減税の上限額を下回る「28万円」と仮定】
住宅ローン借入額が4,800万円となるように頭金を入れると、「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となり、13年間は利息0円で住宅ローンを利用できることになります。
【13年間の住宅ローン減税合計額 3,640,000円>13年間の利息総額 3,616,107円】
また、住宅ローン借入額が4,800万円を下回るほど、住宅ローン減税の上限額内で恩恵が大きくなり、差額を以下のように捉えることも可能です。
- 所得税の一部が軽減された
- 住宅ローンの元本返済の一部が軽減された
【パターン2:13年間、住宅ローン減税額を上限額の「35万円」と仮定】
住宅ローン借入額が5,400万円となるように頭金を入れると、「13年間の減税総額>13年間の利息総額」となり、13年間は利息0円で住宅ローンを利用できることになります。
【13年間の住宅ローン減税合計額 4,095,000円>13年間の利息総額 4,068,178円】
また、パターン1と同様に、住宅ローン借入額が5,400万円を下回るほど、住宅ローン減税の上限額内で恩恵が大きくなります。
手元資金が豊富な場合には、住宅ローンの恩恵を最大限に受けたうえで、「13年間の住宅ローン減税終了と同時に一括で繰り上げ返済」をすることで、生涯の住居費用を抑えられる可能性があります。
こちらの記事で、頭金or繰り上げ返済どちらが得かを判断する方法を確認できます。
〈関連ページ〉「住宅ローンは頭金or繰り上げ返済どっちが得か」は金利・資金状況で判断|頭金なしの住宅ローンも解説
「フルローンの返済額」「無理のない返済額」の差額を頭金にする

家づくりを依頼する施工業者から見積もり書を受け取って「フルローンの返済額」をシミュレーションすると、ご家族にとって無理なく返済できるかどうかを確認できますよね。
※住宅ローン返済額のシミュレーションは、インターネット上の無料のシミュレーションツールで実施できます。
「フルローンの返済額では返済負担が大きい」と感じる場合は、許容できる返済額になるように頭金の額を検討しましょう。
「手元の資金額」「1〜2年間の手取り収入額」の差額を頭金にする
「手元資金として残したい額を決める」という方法も、頭金の適正額を決める1つの方法です。
「残したい額を決める基準」が難しいのですが、住宅ローンの返済開始後に返済に対する不安を感じるのは、転職・失職の場合ではないでしょうか。
1つの例として「1〜2年間の手取り収入額」を残し、残りの手元資金を頭金の額にするという考え方も可能です。
「住宅ローンの借入可能額」「住宅の見積もり額」の差額を頭金にする
「住宅ローンの借入可能額」は、住宅ローンの仮審査を受けることで確認できます。
仮審査の結果が「住宅の見積もり額>住宅ローンの借入可能額」となった場合は、差額を頭金としましょう。
茨城県で資金計画の段階から家づくりのサポートをご希望の方は、『ノーブルホーム粋(SUI)』へお問い合わせください。
住宅ローンの頭金Q&A

最後に、住宅ローンの頭金についてお悩みの方から、ノーブルホーム粋(SUI)がよくいただく質問・回答を紹介します。
Q.頭金の平均額を知りたい
A.多くの方が利用するフラット35の利用者調査によると、住宅ローンの頭金の平均額は473.8万円です。
(土地付注文住宅を購入した方の平均額です。)
〈参考〉住宅金融支援機構ホームページ『フラット35利用者調査』2023年度調査結果20ページ
Q.頭金を支払うタイミングを知りたい
A.頭金を支払うタイミングは「住宅ローンの融資実行前」で、複数回あります。
【頭金を支払うタイミングの例】
- 土地取得費用の支払い
- 工事の着工金・中間金の支払い
- その他諸費用の支払い
※諸費用の詳細を、「必ず現金支出が必要な諸費用を支払う資金が不足」で前述しています。
ちなみに、頭金では支払いきれない費用がある場合には、「つなぎ融資」を利用して支払うのが一般的です。
Q.頭金が多いほど住宅ローン審査に通りやすい?
A.頭金が多いほど住宅ローン総額が少なくなるため、住宅ローン審査に通りやすい可能性があります。
ただし住宅ローン審査の項目は多数あるため、「頭金が多い=必ず住宅ローン審査に通る」とは言えません。
住宅ローン審査の要点となるのは「収入と返済のバランス」「滞りなく完済できる信用力」などで、金融機関は多数の項目を審査します。
こちらの記事で、「収入と返済のバランス」を判断する方法を確認できます。
〈関連ページ〉住宅ローン6500万・6000万は年収いくらなら借りられるか・無理なく払えるか|返済額、借り方など
まとめ
「頭金を入れすぎると、住宅ローン減税で損をするって本当?」と疑問をお持ちの方へ、頭金の適正額を決める方法などを紹介してきました。
住宅ローン減税の視点からは、頭金の入れすぎで損が発生することはありません。
ただし頭金の支出が家計を圧迫する場合などは、後悔する可能性があります。
ご家族の状況に応じて、住宅ローンの利用方法を検討しましょう。
今回紹介した情報を参考に、住宅ローンのスムーズな返済計画を組み立てていただけると幸いです。