茶室を自宅の間取りに取り入れる・庭につくる基本ルール|裏千家・表千家などの有名茶室の特徴も紹介
茶室は、「設計の基本ルール」と「亭主(茶事・茶会の主催者)が思い描く茶の湯の世界」を組み合わせてつくる、芸術作品です。
「基本ルールはあるけれど、自由につくりあげていい」という世界観が、茶室をご自宅の間取りに取り入れる・庭につくる際の難易度を引き上げていますよね。
そこで今回は、茨城県全域で伝統的な和の注文住宅を建築しているノーブルホーム粋(SUI)が、ご自身の思い描く美しい茶室をつくる方法を、わかりやすく解説します。
ご自身の精神世界や茶道の練習に没頭できる・お客様に上質なおもてなしを提供できる茶室づくりのために、ぜひ最後までごらんください。
目次
茶室を自宅の間取りに取り入れる・庭につくる基本ルール
「茶室のつくり」は、茶道の所作や点前に大きく影響します。
以下の基本ルールを把握したうえで、ご自身が思い描く茶室の設計プランを練り上げましょう。
- 基本の設計は裏千家などの流派に従う|造作は草庵風or書院風を選ぶ
- 露地|茶室の一部と考え、自然に佇む雰囲気を表現
- 蹲(つくばい)|露地とあわせて設計
- 躙り口(にじりくち)|寸法のルール、機能性を両立させる
- 炉|お客様と亭主の位置に応じて決める
- 床の間|亭主の個性・おもてなしが大切
- 窓|おもてなし・意匠性・機能性を実現させる
- 水屋・洞庫|見えない部位だがルールを守ることが美しい所作につながる
- 落天井|亭主が座る場所の天井を低くして下座をあらわす
施工業者へ希望を伝える際に役立つよう、それぞれわかりやすく解説します。
基本の設計は裏千家などの流派に従う|造作は草庵風or書院風を選ぶ
茶室の基本ルールに対する認識は、茶道の流派・個人によって大きく違うケースがあります。
そのため、ご自宅の間取りに取り入れる・庭につくる茶室のつくりは、「ご自身が門下となっている茶道の流派に従う」と考えることをおすすめします。
- ご自身が師事している先生の茶室を土台とする
- 過去に参加した茶事・茶会が開催された茶室を土台とする
- ご自身が門下となっている流派の有名茶室を土台とする など
後ほど、「裏千家・表千家・武者小路千家の有名茶室・特徴一覧」で、茶道の流派ごとの有名茶室を紹介します。
また、茶室の基本ルールは、以下どちらの造作を選択するかによっても変わります。
ご自身が思い描く茶の湯の世界観に合わせて造作を決め、施工業者へ伝えて下さい。
- 草庵風:簡素な造作・間取りで、究極の自然の美しさ「侘び寂び」を表現する。
- 書院風:草庵風よりも形式的で豪華なつくりで、棚・付書院などがある。
露地|茶室の一部と考え、自然に佇む雰囲気を表現
茶道では茶室に入室する前の空間「露地」も茶室の一部で、露地を設計する際に必ず守るべき基本ルールは、以下のとおりです。
- 飛び石を敷く:飛び石と茶室の畳は一体のイメージ。
- 山野のような植栽をする:俗世から離れた山野のイメージ、屋外空間だが神聖な茶室の一部というイメージ。
- 茶室内から見える景色を整える:茶室の窓から見える範囲の景色もおもてなしの一部というイメージ。
露地を通る場面から茶道の所作が始まるため、ご自宅の庭に茶室をつくる場合には、お招きするお客様の人数・服装などに配慮して露地を設計してください。
また、ご自宅の間取りに茶室を取り入れる場合には、「廊下を露地に見立てて、室内or屋外に坪庭をつくる」といった工夫が可能です。
坪庭を取り入れた住宅事例を、こちらの記事で確認できます。
〈関連ページ〉小さな坪庭のある玄関事例|失敗しない坪庭づくりのポイント、和風・洋風のレイアウトの違いも解説
露地には、ほかにも「中門」「灯籠」などの設置を検討できるため、ご自宅の庭の面積・周辺環境などに応じて、柔軟にご自身の世界観を表現しましょう。
蹲(つくばい)|露地とあわせて設計
「蹲」は手や口を清めるための場所で、蹲を設置する際の基本ルールは、以下のとおりです。
手水鉢(ちょうずばち)のみ設置するシンプルな蹲をつくる場合でも、以下の要素を意識しましょう。
- 手水鉢を置くスペース・無理なく所作を行えるスペースが必要。(膝を折り、姿勢を低くして手や口を清めるため)
- 手水鉢の周辺には、水に強い植物(シダなど)を植える。(手や口を清める際に、手水鉢の周辺に水を落とすため)
- 手水鉢の前に、足を置く石(前石)を設ける。
蹲のスペースに余裕がある場合には、ほかにも「水を循環させる装置」「前石以外の役石」などの要素を加えることも検討できます。
また、ご自宅の間取りに茶室を取り入れる際には、「室内に坪庭をつくってコンパクトな蹲を設ける」「蹲に見立てた洗面スペースをつくる」などの工夫が可能です。
躙り口(にじりくち)|寸法のルール、機能性を両立させる
躙り口は草庵風の茶室に設けるお客様の出入口で、身ひとつで頭を下げ・手をついて茶室に入室する所作を行えるように造作します。
亭主とお客様が対等な立場で茶の湯を楽しむために必要な造作ですので、躙り口の基本ルールを確認しましょう。
- 一般的な寸法は、「高さ:70〜80cm前後」「幅:60〜70cm前後」。
- 躙り口の外側に踏み石を置く。石から敷居までの高さは35〜40cm前後。
- 躙り口の戸は光を遮る板戸が基本。
ご自宅に屋外から入室できる茶室をつくる場合には、防犯性・断熱性も考慮して、躙り口の設計を施工業者に相談しましょう。
室内から入室できる茶室をつくる場合には、「玄関土間から茶室に入室できる間取りにする」「茶室の床を上げて、廊下から入室できる間取りにする」などの工夫が可能です。
炉(ろ)の切り方|お客様と亭主の位置に応じて決める
炉の切り方は、畳の敷き方※・お客様と亭主の位置関係などに応じて考慮する必要があります。
※畳の敷き方は、のちほど「2畳〜8畳の茶室|畳の敷き方例」で紹介します。
そのため、茶室全般で考慮される基本ルールを紹介します。
- 道具畳(茶道具を置く畳)or手前畳(亭主が点前を行う畳)に炉を切る。
- 亭主が点前を行う際にお客様に背を向けない位置に炉を切る。
- お客様の代表者で、亭主の一番近くに座る正客(しょうきゃく)へ圧迫感を与えない位置に炉を切る。
- 亭主とお客様がコミュニケーションを取りやすい位置に炉を切る。
- 畳の短い辺をまたいで点前をすることのないように炉を切る。
床の間|亭主の個性・おもてなしが大切
床の間の基本ルールは以下のとおりで、掛け軸・草花などの飾り付けで亭主の個性を表現することが、お客様のおもてなしにつながります。
- 床の間は南向きor東向きが一般的(お客様を寒い北向き・陰を意味する西向きに座らせない配慮)。
- 正客(お客様の代表者)が座る貴人畳に隣接させる。
- 床の間に隣接する畳は平行に敷く。
- 床柱は、必ずしも床の間・床脇(違い棚などを設ける空間)の間にする必要はなく、下座のお客様からも飾りがよく見えるように調整してOK。
上記の基本ルールから、はじめに「床の間の位置」を決めることで、「畳の敷き方」「点前座」「炉を切る位置」などをスムーズにプランニングできることがわかりますね。
窓|おもてなし・意匠性・機能性を意識して検討
茶室の窓に特別なルールはありませんが、以下のような点を考慮すると、ご自身の茶の湯の精神世界を表現する際に役立ちます。
- イメージする茶室の明るさに応じて、「障子の設置」「庇(ひさし)の長さ」を検討。
- 「人工物」のイメージから抜け出すために、「天窓」「地窓」などを不安定な位置に設置。
- 壁面の意匠性を高めるため、「円窓」など凝った造作にして景色もつくりこむ。
- 自然物の「不完全であるからこその美しさ」をあらわすために、壁の一部を塗り残す「下地窓」のような造作を検討。
また、窓本来の「室内環境を整える役割」も意識する必要があるため、換気性・断熱性・遮熱性・防音性などの機能性も確認しながら、窓の設置を検討してください。
洞庫・水屋|見えない部位だがルールを守ることが美しい所作につながる
「洞庫(どうこ)」は茶事・茶会で使う道具の収納スペースで、亭主が座ったままで所作を行える位置に設けます。
また、ご自宅のスペースに余裕がある場合には、お湯を沸かしたり懐石の準備をしたりする「水屋(みずや)」を設けることも、検討してください。
水屋を設ける際の基本ルールは、以下のとおりです。
- 茶室の裏口(亭主が茶室に出入りする茶道口)に隣接させる。
- 簡単な流しを設置し、水の受け皿にすのこをかぶせる。
- 流しの上に、洗った茶道具を置く棚を設置する。
天井|天井の高さ・造作にも意味がある
茶室は、天井にも以下のような意味をもたせて設計します。
- 天井の高さ:亭主が座る位置の天井を低くして(落ち天井)、下座をあらわす。
- 造作:天井板と床の間が垂直になる「床差し天井(とこさしてんじょう)」は縁起が悪いため、避ける。
また、「草庵風では天井をあえて張らない造作」「書院風では角材を格子状に組み、板張りをした天井」など、天井のデザインにもご自身が思い描く茶の湯の世界観を込めることが可能です。
茶室をご自宅の間取りに取り入れる・庭につくる場合の基本ルールを紹介してきました。
次に、茶室のイメージをさらに明確にするために、茶道の流派別の有名茶室も一緒に確認しましょう。
茨城県全域でご自宅に茶室をつくることを検討中の方は、ノーブルホーム粋(SUI)へお問い合わせください。
ノーブルホーム粋は、本格的な和の建築に対応可能です。
〈イベント情報〉
〈家づくりご相談会予約〉
〈モデルハウス見学会予約〉
※当社は過度な営業を一切行っておりません。ご安心ください。
裏千家・表千家・武者小路千家の有名茶室・特徴一覧
茶道を代表とする三千家「裏千家・表千家・武者小路千家」の有名茶室・特徴を、一覧表にまとめました。
名称 | 特徴 |
---|---|
今日庵 (こんにちあん) |
・2畳ほど、草庵風 ・洞庫・水屋を合体させたつくり ・点前座正面に板張りのスペースをつくり、床の間に見立てている |
咄々斎 (とつとつさい) |
・8畳ほど、草庵風 ・茶道の稽古場となる基本的な造作 |
又隠 (ゆういん) |
・4畳半ほど、草庵風 ・躙り口の正面が床の間 ・躙り口の上に下地窓・天窓を設けている |
名称 | 特徴 |
---|---|
不審庵 (ふしんあん) |
・4畳半ほど、草庵風 ・床の間・窓の位置が「又隠」同様 |
残月亭 (ざんげつてい) |
・10畳+上段2畳、書院風 ・躙り口の足元に土間を敷き、縁側※も設けた豪華なつくり |
待庵 (たいあん) |
・2畳ほど、草庵風 ・躙り口が大きめ |
※縁側の種類・事例を、こちらの記事で確認できます。
〈関連ページ〉縁側の室内(くれ縁など)・屋外(濡縁など)の種類|廊下との違い、メリット・デメリット、おしゃれな事例
名称 | 特徴 |
---|---|
官休庵 (かんきゅうあん) |
・2畳ほど、草庵風 ・茶道具を置く場所確保のために、平行に敷いた2枚の畳の間に半板を入れている ・点前座正面に東向きの窓を設けている |
半宝庵 (はんぽうあん) |
・4畳半ほど、草庵風 ・躙り口の板戸を引き違い戸にしている ・床の間を挟んで亭主・正客が座る配置 |
環翠園 (かんすいえん) |
・7畳ほど、書院風 ・お客様の中心で亭主が点前を行う配置 |
三千家の茶室の特徴を知ると、茶室の面積はさまざまで、基本ルールを応用して造作されていることがわかります。
畳の敷き方も基本ルールを応用し、時には基本ルール以外の敷き方を選ぶこともあるため、次に紹介します。
2畳〜8畳の茶室|畳の敷き方例
「茶室の最小面積といわれる2畳」から「現代の住宅に取り入れやすい8畳」までの、茶室の畳の敷き方例を紹介します。
2畳の茶室
2畳の茶室は、基本的には床の間と平行に畳を敷きます。
床の間に対して畳を垂直に敷くことは「床挿し」といい、切腹などを連想させることから、縁起が悪いためです。
(例)2畳
ただし、茶室の面積・形状などによって畳・床の間を平行にできないケースでは、「点前座と道具畳(茶道具を置く畳)が畳の縁で隔てられないこと」「点前座が正客に対して失礼な位置にならないこと」などを考慮して畳を敷く場合もあります。
実際に、表千家の茶室「待庵」などでは、床挿しで畳を敷いています。
(例)待庵
3畳の茶室
3畳の茶室も、基本的には床挿しとならないように畳を敷きます。
(例)3畳
ただし、2畳の茶室と同様に、以下のような床挿しの敷き方をしている茶室もあります。
(例)床挿し
4畳半の茶室
4畳半の茶室は、床挿しを避けるほか、右回りに畳を敷きます。
左回りに畳を敷くと、「切腹の間」と呼ばれる縁起の悪い敷き方となるため、注意してください。
(例)4畳半
また、半畳を中心以外の位置に敷く場合には、鬼門(北東)を避ける敷き方にするのが基本のルールです。
(例)4畳半
6畳・8畳の茶室
6畳・8畳と面積が広がると畳の敷き方のバリエーションが増えるため、「躙り口の畳の目を進行方向にする※」といった配慮も加えて、畳の敷き方を検討しましょう。
※躙り口の畳の目を進行方向にするとお客様が移動しやすいですし、摩擦で畳の目が劣化するのを抑える効果もあります。
(例)6畳
(例)8畳
茶室の畳の敷き方例を紹介してきましたが、住宅の状況によっては、ルールどおりに畳を敷けないケースもあると思います。
「点前座でスムーズに動けない場合」「お客様との距離が近い場合」は、板間を加えて茶室の面積・形状を調整するといった工夫も可能ですので、ぜひ自由な発想で茶室づくりをしてください。
茨城県全域でご自宅に茶室をつくることを検討中の方は、ノーブルホーム粋(SUI)へお問い合わせください。
和の伝統的な建築を、高い設計・施工技術で実現いたします。
〈イベント情報〉
〈家づくりご相談会予約〉
〈モデルハウス見学会予約〉
※当社は過度な営業を一切行っておりません。ご安心ください。
茶室のような空間を自宅の間取りに取り入れた事例
ここまで本格的な茶室のつくりかたを紹介してきましたが、「もっとカジュアルに茶室のような空間を自宅の間取りに取り入れたい」とご希望の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで次に、茶室のような空間を間取りに取り入れた住宅事例も紹介します。
こちらの住宅は、草庵風の茶室を思わせるつくりの和室を間取りに取り入れました。
丸窓や下地窓風の造作が特徴です。
〈関連ページ〉数寄屋門のある平屋
こちらの住宅は、シンプルな書院風の茶室を思わせる和室を、間取りに取り入れました。
ネイビーのクロスでつくりあげた落ち着いた雰囲気を、地窓から入る自然光がやわらげています。
〈関連ページ〉街並みのアイコンとなるシンボリックなコの字の平屋
地窓の設置事例・後悔しない設置方法を、こちらの記事で確認できます。
〈関連ページ〉地窓の魅力とデメリット、後悔しない選び方|玄関などの設置事例、目隠しアイデア・防犯対など解説
こちらの住宅は、リビングの一角に4畳ほどの畳スペースを設けています。
畳と平行にダウンライトを設置したシンプルな空間は用途が豊富で、お気に入りの茶道具を出して、ご家族と一緒に気軽に茶道を楽しめます。
〈関連ページ〉庭とアプローチでお客様を楽しませる家
ノーブルホーム粋(SUI)には、今回紹介しきれなかった事例がまだたくさんあります。ぜひごらんください。
茶室を自宅の間取りに取り入れる・庭につくるQ&A
最後に、茶室をご自宅の間取りに取り入れる・庭につくることを検討中の方から、ノーブルホーム粋(SUI)がよくいただく質問・回答を紹介します。
耐久性が高く手入れしやすい畳の種類を知りたい
畳の素材はさまざまで、それぞれ特徴があります。
- 国産い草:十分に育ててから刈り取るため、太さ・色のムラがなく耐久性が高い。
- 海外産い草:国産い草より安価だが、短期間で刈り取るため太さ・色にバラつきがある。
- 和紙:耐久性・撥水性が高く、メンテナンスしやすい。い草より高価。
- 樹脂:耐久性・撥水性が高くてメンテナンスしやすいが、熱に弱い。また自然素材ではないため、肌触りに違和感を感じるケースもある。
畳の素材は、茶室の環境(日当たり・湿度など)に応じて選びましょう。
茶室を普通のハウスメーカー・工務店に依頼して大丈夫?
茶室を自宅の間取りに取り入れる・庭につくる際には、数寄屋造りの住宅建築が可能な施工業者に依頼することをおすすめします。
数寄屋造りの住宅建築には高度な設計・施工技術が必要で、「工場で製造した建材を組み立てる」といった方式での住宅建築が専門の施工業者では、対応できないケースがあるためです。
また、伝統的な和の住宅建築に精通している施工業者であれば、茶室の基本ルールに配慮しながら、自由な発想で茶室をつくりあげるプランのサポートも安心して任せられます。
茨城県全域でご自宅に茶室をつくることを検討中の方は、ノーブルホーム粋(SUI)へお問い合わせください。
和の伝統的な建築を、高い設計・施工技術で実現いたします。
〈イベント情報〉
〈家づくりご相談会予約〉
〈モデルハウス見学会予約〉
※当社は過度な営業を一切行っておりません。ご安心ください。
まとめ
茶室をご自宅の間取り・庭につくる場合の基本ルールを紹介してきました。
茶室づくりには守るべき基本ルールがありますが、時にはおもてなしを優先する柔軟な発想で、基本ルールにはない設計プランを取り入れるケースもあります。
今回紹介した情報を活用して、理想の茶室を完成させていただけると幸いです。